真の名をつけ、世界から現象を切り取り問題として認識する
いま僕が直面している課題のひとつに、どうやってみんなの意識改革をするのか、そしてその改革方法が有効であるかをいかに関係者に伝えるのかというものがある。
人を巻き込みなんらかの問題解決をするためには、まずは問題提起をし問題を解決することのニーズを生むことが必要だ。
問題が提起されない要因
問題が問題として意識されない要因としては
①その現象をそもそも問題として認識できていない
②その現象で発生する困りごとが自分ごと化されていない
のいずれかだろう。
①についてはKutooの例を考えてみるといいかもしれない。
女性たちは社会からの圧力として体に悪い靴を履くことを強いられており、もっと楽な靴を履くという選択肢を制限されているという現象があった。しかし、それはこのKutoo運動が起きる前には、なんとなくみんなが抱える苦痛・不満という程度にとどまり、解決を目指すものではなかった。
ただの現象が問題として提起された途端に、社会のいろいろなところでこの問題の解決に向かってアクションが取られた。
②については、保険の例で考えてみよう。
半年ほど前に外資系の生命保険会社の営業担当者と話した。
この会社の営業の仕方としてなにが上手かというと、No needs no presentation が貫かれていることだ。営業の最初に顧客の人生全体で発生する支出とリスクを明確化することが手法として確立されている。(この保険会社の別の担当者が別のお客さんに話しているところをたまたま聞く機会があったが、ほとんど同じ話法だった)
保険がないことでどのような困りごとが発生するのかを明示し、その困りごとを自分ごと化することで確かに解消するべき問題だと意識させることができる。
問題をどのように認識させるか
以下では、①について深掘りしてみよう。
先程立ち読みしていた本 *1の前書きで、「真の名前を明らかにすることで敵を倒す」という物語の類型があることが紹介されていた。
なぜ真の名前を明らかにすることで敵を倒すことができるのかというと、それは別の本の表現を借りるなら*2的確に表現された言葉というのはみんなを導く旗印になるからである。
ペンは剣よりも強しという言葉があるが、なぜ強いかというとペンで記述しみんなに問題意識が共有されれば、その問題解決のためにエネルギーを集めることができるからだろう。
言語化の効用
やや脱線するが、マックスウェーバーの脱魔術化というのは、世の現象を科学的に解明することで、これまで人類が相対していた現象から神秘のベールを剥ぎ取ることだ。
科学的な言葉で言語化することは、合理的な解決策に導くことにつながるのかもしれない。
また、いまの意識改革の難点は「そんな高度なことができるはずがない」という空気が流れていることだ。この空気の力についても、なんとか打破する必要がある。*3 空気を破るためには、どれだけうまく問題提起ができるのかが重要なのだと思う。