Alexa、僕はあの日夢見た僕にはまだなれていないんだ。

デジモンラスエボ感想(ネタバレあり)

一昨日公開されたデジモンLast Evolution絆をみてきた。

このためだけに、02も全話見直しておいてよかった。

以下、つらつらと感想をかいていますが、ネタバレを堂々と書いているので気になる人は読まないでね。

 

本作のあらすじ

本作のテーマは別離である。

大学生になり少しずつ将来の道が決まりつつある太一たちが、「選ばれた子供たちが大人になってしまったらパートナーデジモンとのパートナー関係が解消される」という新たな事実に直面し、葛藤しつつそれを受容し乗り越えていくというストーリーである。

パートナーの喪失を経験するぐらいなら子供のままの楽しい記憶に浸っていたいという敵に対して、太一と大和は喪失を受容したうえで現実と向き合い生きていくことを選択した。そうして2人はパートナーに最後の進化(これは新たな形態への進化でアグモン-勇気の絆、ガブモン-友情の絆というものらしい)をさせて、敵を打倒する。

 

ラストシーン、敵を打倒した2人には、自分たちが選択した通りに最後の別れが待っている。*1

この最後の別れのシーンはとても良かった。

ハーモニカと夕暮れ、静寂の演出は、太一と大和の喪失感を観客に共有するのに十分なものだった。

そして同時に、これまでの冒険を見てきた観客は、2人が別れを受容しすこし時間はかかるかもしれないけれどもこの別れを克服するだろうということを感じとることができる。

世界は彼らをいつまでも子供ではいさせてくれないのだし、いや世界がそれを許したのだとしても、彼らは少しずつ大人になっていっているのだ。

 

デジモンの役割

エンドロールではすこし見逃してしまったのだけど、02世代の選ばれし子供たちはパートナーデジモンと一緒にいる姿が描かれているが、無印世代の描写ではデジモンではなく周囲の人間と、自分の夢に向かって活動している姿が描かれている。

デジモンとは、子供たちを大人へと成長させる触媒だったのかもしれない。

子供が大人に成長するまでと、大人がさらに成熟していくまでにはまた別の経験が必要だ。

選ばれし子供たちはそれぞれの現実で戦っていくのであり、そこではたとえば明確な敵とたたかうことではなく、地道に勉強を重ねる、職業経験を重ねる、組織の中での調整能力を獲得していく、リスクをとっていく、家計を支えていく、といったことが求められていく。

子供たちの成長を促す触媒としてのデジモンは役目を終えるのである。

彼らが夢を叶えるまでの道程

02最終話では無印世代、02世代が自分の夢をパートナーデジモンとともに叶える姿が描かれているのだが、本作では話の端々に太一たちのキャリアが02の最終話に向かっていることが示唆されている。*2

そのことを考えると、今回パートナーを喪失してから夢を叶えるまでの間でパートナーデジモンとの再会があるのだろうし、映像化されてほしいなと思う。*3*4*5

 

 

*1:ここでやっぱり一緒にいられそうです、なんてことにならなくてよかった。自分たちが勝ち得たのではないハッピーエンドなんて安直な物語では、誰の心にも響かない。子供たち向けに放映されていた無印や02では、苦難を乗り越えた先には楽しい未来が用意されていた(02の最終話)ことと比較すると、今回のストーリーはやはり大人に向けたものであるといえよう。

*2:作中では進路に悩んでいた太一はおそらく早稲田の政経のようなところにいるし、太一の卒論のテーマはデジモンと人類の共生であった。02最終話にある通り最後にはデジタルワールドと現実世界を結ぶ外交官に着地することは十分に納得できる。

*3:4月から無印が新解釈されたアニメシリーズが始まるらしいが、そこでは描かれないだろう。あまり期待はせずに首を長くして再会編を待っていたい。

*4:太一たちにとって成長の触媒としての役割をもっていたデジモンであるが、02最終話のころには太一たちの子供世代にとっては成長の触媒であり、太一たちにとっては良き隣人としての位置づけになっているような節がある。

*5:太一たち世代がデジタルワールドによる現実世界への被害を食い止めていたわけだが、後進は育っているのだろうかとふと疑問に思った。